中津川市・恵那市 不動産情報アラカルト2

*建築条件付不動産売買契約

以前より住宅が欲しく、住宅地を探していたところ良い物件が見つかりました。
先日、私は、岐阜県恵那市長島町中野の土地が気に入ってA社と売買契約しました。
売主A社は、不動産業と建築業を営んでいます。
契約内容は、建築条件付不動産売買契約です。
A社に住宅建築を依頼する条件で土地の売買契約をしました。
土地の契約金額は、800万円です。
手付け金を20万円支払いました。
私の希望する住居を建築しようとすると、A社の建築費の見積は、1800万円必要です。
土地代と建築費の合計で、2600万円必要となります。
ところが、住宅金融公庫等の借入金等や返済金の事も考慮に入れて、
2400万円位しか資金が工面できそうにありません。
200万円不足になります。
かといって、私が建てようとした家は、以前からの私の夢ですから、
できるだけ希望に沿ったものを建築したいと思います。

ある日、私の知り合いのB建築業者がきて、今回購入する土地は安いかもしれないが、
A社の見積建築費は高いのではないかと言います。
B建築業者が言うには、私のところでは建築費の見積は、1500万円で安いと言います。
確かにB建築業者は、
A社と比べると安く、土地代800万円とするならば、建築費1500万円で、
計2300万円
となり、私にとっては、必要資金が工面可能な金額です。

ついては、この建築条件付不動産売買契約を解除したいが、どうしたらよいでしょうか。
契約書には、契約の履行に着手している場合には、
契約金額の20%を違約金として買主は、売主に支払わなければならないと記載があります。

20%支払うとすると160万円必要になります。
どうなるのでしょうか。

まず第一に所有権移転登記が完了したか尋ねたところ、未だである。
残金を充当した時に所有権を移転することになっている。
建築の請負工事契約を締結したか聞いたところ、請負工事契約は締結していないという話。
この問題に関しては、相談者が契約に至るまでに軽率な点があったことを注意した。
その上で、土地の所有権移転登記も未だ済ませていないし、
請負工事契約もしていない以上、契約の履行には着手しておらず、次ぎの様にアドバイスしました。

土地の所有権移転登記が完了していれば、履行の着手はあったと見られますが、
今回は、所有権移転されていない以上履行の着手があったとは言えません。
従って、手付け金20万円を放棄すれば解約できます。
20万円については捨てることになります。
それは、仕方ないでしょう。自分の都合で解約するわけですから。
違約金160万円は支払うこともありません。
良心的な不動産業者ならば160万円を請求してくることもないでしょう。

ただし、できることであれば、A社と穏やかな話合いをして契約解除すべきでしょう。
A社も不動産業者で建築業者である以上、土地だけを売ってくれることはないと思われます。
建築で利益を上げるつもりだから、土地だけ希望しても無理と考えられます。
また、B建築業者のことは話さないのが、賢明と考えられます。
同業者としてはおもしろくないですから。

もし、仮にA社が契約の履行に着手しているというのであれば、
どのように契約の履行に着手しているか確認の上、弁護士等に相談することも良いでしょう。
その不動産業者が、不動産の協会等に加盟していれば、
その加盟協会に、トラブル相談や調停のようなことをしている事が結構多いですから、
その様な団体の相談窓口に申立てするのも一つの方法でしょう。
不動産協会の相談は無料と思われます。
以上のようにアドバイスしました。
それ以後、その相談者は、なんとも言ってきませんので、うまく話がついたのでしょう。

この話を、不動産業者の側から見ますと手付け金20万円としたところが
失敗であったと見れば見えなくもありません。

手付け金を80万円とか100万円とすれば、
買主である相談者も手付け金を捨てることも惜しいので、
買主は契約解除を考えることもなかったかもしれません。
仕方なく、建築面積等を減らすことによって
自分が金銭的に工面できる範囲内で建築請負工事契約をしたかもしれません。

中立的立場で見ますと、
どうしても買主である相談者に多少の責められるべき点があったのは事実と考えます。

契約にあたっては軽率であったと考えます。
そのペナルティーとして、20万円を放棄することになった訳です。

不動産取引紛争事例集では
一般的に不動産売買契約では、
買主から売主に手付けが交付されたときには民法(557条)と同様に、
原則として買主は手付け流し、売主は手付け倍返しの原則によって、
履行の着手があるまで、当事者は契約を解除することができることになっています。

不動産業者が売主である不動産売買においては、
手付は常に解約手付の性質を有し手付倍返しの原則によって、
履行の着手あるまでの間、当事者は契約を解除することができる。

従って、たとえ手付金額が売買代金と比べて少額であったとしても、
それは証約手付ではなく、解約手付と解すべきこととなる。

買主による解除権行使をめぐる紛争の背景として、
少額手付金の授受という事実があることを指摘しておく必要があります。
すなわち、宅建業法上は手付額の上限については制限があり、代金額の20%以下とされているけれど、
下限については何も制限がない。
従って、数千万円の不動産取引にあっても、手付金として1万円の授受がなされることさえある。
このような場合にも、その手付を放棄して買主が契約を解除すると、
売主側ではそれまでに要した費用等を到底手付金額では充足できず、
これによる損失を防止する目的で履行の着手を主張する場合が少なくない。
従って、紛争の核心は、少額手付による契約成立に伴って生じた損失を
当事者のいずれが負担すべきかという点にある。

今回の場合、買主に所有権移転登記も未了で、その土地に関しての造成工事も不要で、
かつ、建築の請負工事契約もしていないため外形的にも契約の履行に着手しているとは思えない。
従って、買主側は、手付金を放棄することによって契約を解除することができると考えられる。

契約の着手と見られない例として、
大規模な戸建住宅の分譲やマンション分譲の場合にみられるように
売主側が予め定めた建築計画に従って工事等がなされる場合には、
売買契約の締結後に工事の着手があったとしても、それは契約の履行を目的とした行為とはいえず、
履行の着手には該当しない。

履行の着手には、その行為と契約締結との間に因果関係が存在すること。
若しくは、その行為が特定の買主に対する債務の履行だけを目的とした行為であることを要する。

登記手続きを行うことは、履行行為そのもので履行の着手に該当すると考える。

所有権移転登記手続は当然であるが、土地の分筆登記手続はどうであろうか、
これが履行行為の不可欠の前提となるものであるならば履行の着手に該当することになる。
これに反して、大規模の土地分譲などで土地取引にあたって前提となる航空測量や分筆登記手続などは
原則として履行の着手には該当しない。

また、手付金放棄による契約解除が認められる場合にも、
契約で売主側がなお損害賠償または違約金を請求できるという旨の特約をしてある場合がある。
しかし、正規の不動産業者が売主であるならば、その様な特約は宅地建物取引業法上否定されている。
売主としては、損害賠償請求できない。

不動産業者以外の者が売主の場合には、
そのような特約も契約自由の原則で有効となる。

                                                  ……となっている。

今回のこの契約に関しての多額の費用を支出したとも見られない以上、
売主側は買主側の手付金を没収することによって損害はないものと考えられるし、
不動産業者であるため、これについての損害賠償請求はできないと考える。

どちらにしても、現代社会では書面というものが大切だという事なのでしょう。
100の言葉よりも一枚の書面。書いた物がものをいう世の中と言いますし。
実際、書いた物は、しゃべったりしませんけれど、後日の証拠となります。
契約書がなければ、この当事者たちは、言った言わないと水掛け論となり、
余計に神経をすり減らし、
実に無駄な時間をエネルギーを費やしてまでも過ごさなければならなくなったでしょう。
今回の件については、一枚の契約書が存在し、
売主側が不動産業者であるがゆえに、今回偶然にも簡単に話がついたものと考えられます。
書いた物があっても、現実社会ではトラブルとなり多くの紛争や裁判となります。
これは、解決に向かっての稀なケースだったかもしれません。
しかし、書いた物は、紛争等を少しは予防できると考えます。

良きにつけ悪しきにつけ、現代社会では書いた物は重要であると言うことです。
遠い将来、トラブルなんか一切発生しない世の中がくると良いですね。
そのかわり、弁護士も裁判所も商売上がったりか。

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