中津川市・恵那市酒井行政書士事務所のよっコラム11

*行政書士の独り言

★公証の崩し方について

公証とは公の証明をいい、行政証明ともいわれている。
戸籍、住民票、登記簿謄本などのほかいろいろなものがある。
それら証明の記載は一応真実であるという推定力と公証力が働く。
但し、戸籍や登記簿に記載があるからといって
全く反証が許されないわけではなく、事実と異なっていればいくらでも反証することができる。

過去の事例では、A氏の固定資産課税台帳に、以前B氏に売却した土地にも拘わらず
そのまま宅地がA氏のものとして十数年課税されていた。
かといって、B氏に課税されていなかったわけではなく、二重課税されていたのである。

所有権登記は売買したのであるから、当然B氏の名義になっている。
同じ地番の土地が2筆存在するなら、法務局にも以前売却したB氏名義の登記簿のほかに
もう1筆A氏名義の登記簿が存在せねばならない。
現在の登記簿、閉鎖された登記簿、公図、閉鎖図など調査しても見あたらない。

法務局では、存在しない登記簿の証明などできないという。
私も当然のことと考える。ないことの証明など不可能なのである。

一応の存在しないことの証明として、以前B氏に売却したB氏名義の土地登記簿や公図・閉鎖図等を
取得して逆説的証明で市役所の担当課と協議をする。
当方の見解に対して市側としての過ちがないのであるなら客観的に反論してくる筈である。

市は、独自調査の結果A氏の主張通り過ちを認め、
十数年間 A氏は売却したにも拘わらず固定資産税だけ支払っていたことになった。
その結果の処理として、市は最高年限過去10年分の支払った固定資産税に利息を付して
A氏に返還したのである。10年を越える部分に対しては時効になっていた。

A氏の不動産管理の状態が悪かったといえばそれだけのことであるが、
このことに気づかなければ、いまだ固定資産税を支払い続けていたことになっただろう。

このように公証・行政証明といえどもひっくり返すことができる。
要するに、いかに客観的に反証をあげるかによるだろう。

登記簿での記載でも同様である。
コンピュータ化される以前の話で恐縮であるが私が知る限り、
1000/5から1000/10くらいの確率で登記簿の記載に文字的な誤りがあった。
今はわからないが、少なくなったといえども、多少の誤字記載はあるだろう。
ましてや、過去の権利移転や権利設定がどれだけ事実を反映していたのであろうか。
実に疑問である。
中間省略登記など日常茶飯事である。

その反動かそれとも他に理由があるせいか、
現在では登記法の改正以後 司法書士が中間省略登記事件を受けなくなった。
中間省略登記に類似した登記で、第三者の為にする登記・買主の地位譲渡の登記があるが
それさえも、司法書士は、やりたがらないような感覚にとらわれるときがある。
たぶん、さほどの報酬を稼げるわけでもないのに、
訳の分からぬリスクを負うのは御免こうむりたいというのが本音だろう。

それはさておき中間省略登記したため、トラブルを背負い込んだ場合には、
この公証(行政証明)を逆転せねばならない。

昔の中間省略登記とは、売買実体は売主A、買主B、Bからの買主Cという具合で、
登記はAから直接Cに移転登記される。
中間者にB、C、Dが入り、Eが最終の買主となり、AからEに移転登記される場合もある。
登記簿上は、直接Aから最終の買主のCやEに移転登記されているため、
最終買主はAから購入したように窺えるのであるが、
実体は最終買主の直前の売主BやDから買っているのである。

これらの場合、そのような事情を全く知らない第三者から、
登記上直接の売主に見えてしまうAに対して
不条理にも、損害賠償などを含むいろいろな請求があったときには、
Aとしては直接の売主ではないため登記簿の記載と事実は異なること、
請求するべき相手を、Aとするには適切ではないことを証明せねばならない。

証明できないときには、登記簿が公示とはいえ一応証拠能力もあるため
Aが直接最終の購入者に売却したものとして責任を負う羽目にもなりかねない。

逆転の仕方は、一にも二にも反証である。
それも合理的かつ客観的なものでなければならない。
この場合、契約書が第1にあげられる。AからBに土地を売却したときの契約書である。
若しくは、BC間・CD間の契約書などの入手及び証言を得ることができれば
論理的にAが直接に最終の所有者CやEに売却したのではないことが証明可能となる。

それに対して異論があれば、損害賠償請求した第三者がAと最終購入者の契約書や証言などに
よって再び反論するであろう。

また、古い登記に関しては、多かれ少なかれ曖昧な登記がなされている。
登記が曖昧というのではなく、登記に至る内容及び過程が曖昧でいい加減であったというのである。

全ての登記がデタラメというわけではないが、当時の登記権利者・義務者達をも含め関係者の行為に
よって数%の確率で混じっているのも事実であろう。
その曖昧さや不明瞭さが、十数年経過して問題になるなど当事者は想定はしていない。
当時、せいぜい司法書士の報酬などを節約するというたわいない考えによるものであっただろう。

そして、現在それら不正確な内容の登記を見破ることは、
登記記載の文字面だけを見ていてもほとんど判明するすることはない。
時として、周囲の土地建物の登記状況などで不自然さを見つけることができることもあるが
これは偶然性と究極の技がかみ合ったときくらいで、概して無理と言えよう。

最も効果的方法は、基礎的ではあるが現地調査や附近生活者からの聴取である。
登記の字面ではわからない情報を得ることができる。

また、登記はいまだ公信力は備わっておらず、
公示の原則に立ち返れば、公示は所詮公信ではなく公示なのである。
ゆえに、調査しないことは請求者の甚だしい手抜き行為であり、
現地調査無しに登記のみの信用は、請求の相手方に迷惑をかける可能性が多大で、
見方によれば不法行為とでも言えるのではないだろうか。
また、自己の愚かさを露呈する結果にもなりうるのである。
さらに、自己の未調査を棚に上げて相手に責任転嫁するなどとんでもない所業と言えよう。

上記の中間省略登記の件は、実際に起こった事例である。
それも士業といわれる方が行った事例である。
ある面、公証の崩す方法であるが、反面 公証といえども最低限の裏付けくらいは
念のため取っておいた方が失敗はないということでもある。
具体的には、電話でもいいから当時の状況を確認するだけのことである。
トラブルの起こる前に、トラブルを起こす前に確認さえしておけば、よかったのである。
問題の起こる以前のことだから、事情説明に嘘をつく必要もない

それも百戦錬磨の士業といわれる方が、調査しなかったことに起因して、
相手方に著しい迷惑をかけたのである。
相手方に迷惑をかけたのと同程度に、自分の依頼者にも適確な情報を与えることができず、
最終的には、適正な行動がとれない結果を導き出したのである。

以上のように、公証・行政証明というものは、公証力・推定力が働くのであるが
事実が異なっていればいくらでも反証をあげることができる。
客観的な反証によって、いくらでも公証力・推定力を打ち破ることができる。
要は、反証であってもなくても、物事をいかに調査するか、
いかに確認するか、いかに事実を見極めるかということに尽きるだろう。

公証の崩し方を、士業の端くれ行政書士として教訓的に考えるなら、
反証(物事)を調査する・確認する場合、面倒だからといって手抜きをしてはいけない。
冷静に、独断や偏見・先入観をもたず、周囲の関係事実を一つずつコツコツと多方面から積み上げ、
時として想像をも加え より正しいものが見えてくるのではないだろうかと考える次第である。

こうありたいと常々考えているものの、
無精な私にとって、これらのことが勤まるか、甚だ疑問と言わざるを得ない。

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