中津川市・恵那市酒井行政書士事務所のよっコラム14

*行政書士の独り言

★犯罪収益移転防止法に思うこと

前回より、士業の共通認識と犯罪収益移転防止法について私なりにさらに学習してみた。

士業の特定業務とは−−−

*以下の行為の代理又は代行を行うことを内容とする契約の締結
1.宅地又は建物の売買に関する行為又は手続

2.会社の設立又は合併に関する行為又は手続その他の政令で定める会社の組織、運営又は管理に関する
  行為又は手続(会社以外の法人、組合又は信託であって政令で定めるものに係るこれらに相当するも
  のとして政令で定める行為又は手続を含む。)

3.現金、預金、有価証券その他の財産の管理又は処分(前二号に該当するものを除く。)

士業の共通認識がなぜ上記の様になるのか理解できるに至ったのであるが、
ここで、特定業務が上記3点の限定であるとすると、犯罪収益移転防止法が無意味になるように考えられる。
例示と言うことなら、今後の解釈を待たねばならないだろう。

犯罪収益防止法の趣旨は、犯罪組織(犯罪者)が犯罪収益を合法的な経済活動に投入し、
その支配力を及ぼすことで更に勢力、権力の拡大を阻止するため、資金面から犯罪組織、犯罪行為を撲滅し、
結果、国民生活の安全と平穏を確保するとともに、経済活動の健全な発展に寄与することであろう。


にもかかわらず、本法(以下、犯罪収益移転防止法をいう。)にて決められていることが、
上記の3点に限定されるのであれば、法律の趣旨は著しく損なわれ、士業にては形骸化を招くのではないかと
危惧する。
つまり、上記3点の限定のみの範囲で本人確認等をするなら、
社会秩序の維持や社会生活の安全性等を確保することはできないと考える。

例えば、上記1については、宅地及び建物と限定されているため、雑種地・原野・山林ほか農地等のものは
除かれるのであろうか。それら土地の価格でも1000万円を軽く越える物件も多くあると考える。
地方の小都市(私の住む地域)には農地が多くあり、行政書士業務としては、農地転用許可申請もその一つである。

つい先日、200坪ほどを駐車場にするということで申請した。
土地の売買代金は、そうとうな金額らしい。
しかし、この犯罪収益移転防止法における士業の特定受任行為の代理等の考え方からすると、
この農地転用許可申請についての代理・代行は、本人確認適用外ということになると考えられる。
なぜなら、転用目的が駐車場ということは、宅地の売買ではないからである。
田や畑を雑種地にする売買のため、宅地の売買ではない。
よって、本法の適用外となるのだ。

従って、本法適用外であるなら、本人確認及び書類の作成保存・取引記録の作成保存も必要なしということになろう。

また、行政書士の行う業務の中に車庫証明業務がある。
本法では、自動車の販売会社(ディーラー)に本人確認の義務があるかどうか知らないが、
(中古車販売は、古物営業で本人確認義務がある。)
行政書士に、この車庫証明業務の依頼があった場合、本法によれば上記3点(土地建物売買・会社設立・
現金等財産の管理処分)に該当しないため、犯罪収益移転防止法の本人確認適用外ということになろう。

例えば、詐欺師グループが詐欺した金、1000万円で外車を購入したとする。
購入に際しては、行政書士が車庫証明や自動車の登録などを行った。
数ヶ月して、その新車を中古車として現金化し、どこかに環流させることもできよう。

これらはほんの一例に過ぎない。他士業の専門分野も合わせれば、相当 適用外が多くあると推測できる。

また、本法において、特定事業者として土地家屋調査士が入っていない。
宅地や建物の売買には関係ないだろうという考えによるものと思われるが、
建売分譲などにおいては、譲渡証書など作成して直接買主に表示登記できる。
つまり、表示登記前の建物売買が登記上見えない結果となるのである。
私の個人的意見としては、土地家屋調査士も本法の特定事業者に加えるべきだったと考える。

また、先日もある報道で振り込め詐欺の被害金額が一日1億円であるとか伝えられていた。
これらの犯罪については、くどいほどに注意喚起を促しているのであるが、
犯罪行為は、より巧妙に手口を日々変化させているのである。
つまり、どの犯罪も、ウイルスが絶えず変容するように、現代社会では日々巧妙になっていると考えるべである。

その中で広範囲になんらかの手かがりを得ようとするのであるなら、上記3点に限定するのではなく、
それぞれの士業務のほとんどを、特定業務・特定取引(特定受任行為の代理等)にすべきと考える次第である。


以下の表は、犯罪収益移転防止法の第4条に記載されている士業者部分を抜き書きし掲載した。

特定事業者 特定業務 特定取引
第二条第二項第四十号に掲げる者 司法書士法(昭和二十五年法律第百九十七号)第三条若しくは第二十九条に定める業務又はこれらに付随し、若しくは関連する業務のうち、顧客のためにする次に掲げる行為又は手続(政令で定めるものを除く。)についての代理又は代行(以下「特定受任行為の代理等」という。)に係るもの 特定受任行為の代理等を行うことを内容とする契約の締結その他の政令で定める取引
一 宅地又は建物の売買に関する行為又は手続
二 会社の設立又は合併に関する行為又は手続その他の政令で定める会社の組織、運営又は管理に関する行為又は手続(会社以外の法人、組合又は信託であって政令で定めるものに係るこれらに相当するものとして政令で定める行為又は手続を含む。)
三 現金、預金、有価証券その他の財産の管理又は処分(前二号に該当するものを除く。)
第二条第二項第四十一号に掲げる者 行政書士法(昭和二十六年法律第四号)第一条の二、第一条の三若しくは
第十三条の六に定める業務又はこれらに付随し、若しくは関連する業務の
うち、特定受任行為の代理等に係るもの
特定受任行為の代理等を行うことを内容とする契約の締結その他の政令で定める取引
第二条第二項第四十二号に掲げる者 公認会計士法第二条第二項若しくは第三十四条の五第一号に定める業務又はこれらに付随し、若しくは関連する業務のうち、特定受任行為の代理等に係るもの 特定受任行為の代理等を行うことを内容とする契約の締結その他の政令で定める取引
第二条第二項第四十三号に掲げる者 税理士法(昭和二十六年法律第二百三十七号)第二条若しくは第四十八条の五に定める業務又はこれらに付随し、若しくは関連する業務のうち、特定受任行為の代理等に係るもの 特定受任行為の代理等を行うことを内容とする契約の締結その他の政令で定める取引

文頭の士業者の共通認識は、下記のように構築されているものと推測する。

*司法書士の場合
  司法書士法に定められている司法書士業務又はこれらに付随し、若しくは関連する業務のうち、
  顧客のためにする次に掲げる行為又は手続(政令で定めるものを除く。)についての代理又は代行
 (以下「特定受任行為の代理等」という。)
に係るもの

 「特定受任行為の代理等」とは、『顧客のためにする次に掲げる行為又は手続についての代理代行に係るもの』との
 ことであろう。次に掲げるとは、3点(土地建物売買・会社設立・現金等財産の管理処分)を示していると考えられる。

*行政書士の場合−−他士業者同じ
  行政書士法に定められている行政書士業務又はこれらに付随し、若しくは関連する業務のうち、
  特定受任行為の代理等に係るもの
  以下との記載があるため「特定受任行為の代理等」を先の3点とするならば、士業者の共通認識と同じとなる。
 
  私個人としては、気に入らないが・・・ それなりに納得できなくはない。
  少なくとも、個人的には、3点(土地建物売買・会社設立・現金等財産の管理処分)限定解釈でないことを
  期待するばかりである。


以上は、私見であるし、私の解釈の仕方が間違っているかも知れない。
これはこのように解釈するものだとお考えの方は、是非ご教示頂きたい。

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