中津川市・恵那市酒井行政書士事務所のよっコラム9
*保証債務・税・相続について
保証債務の履行を履行するために資産を譲渡した場合の課税の特例(所得税法64条2項?)
よくこんな話があります。
実際に夢のマイホームを手に入れたものの会社が倒産してローン返済が不能になったとか、
連帯保証人になって自分の家を処分する破目に陥った人など結構いるものです。
以前居住用財産の売却における特別控除を説明しました。
今回は、人の保証人になって、
自分の居住用家屋や不動産を処分しなければならなくなったら、どうなるのかということ。
では、人の借金を肩代わりしたらどうなるのでしょうか。
保証債務というやつです。これが結構あるんですね。
人の保証人になったばっかりに、自分の家を手放すことになった。
これ程、馬鹿らしい話はありません。
自分で金銭を借りてドンチャン騒ぎして浪費したという話しならまだ納得いきますが、
お金の顔を見ずに返済だけはしなければいけないなんて。
これを債務なき責任と、昔、学校で習ったような気がします。
それに対して責任なき債務というのがあります。
例えば、あるところに相続人がおりました。
その相続人の親は、銀行から多額の借金をしておりました。
債務者つまり被相続人は、借入れ時、自分の不動産に対して担保設定するとともに、
金銭消費貸借契約に第三者の保証人を付けておりました。
そして、あるとき、債務者は急死してしまいました。
その相続人は、多額の借金を被相続人が抱えていることを知っていたので、
限定相続の手続を裁判所を通じて取りました。
その結果、最近の地価下落も伴って不動産を処分しても、借金は大部分返済されることなく残りました。
被相続人の保証人は、相続人が限定承認の手続をした後も責任を取らなければなりません。
つまり、その残債は、保証人が支払わなければならないのです。
みごと一見落着。気の毒気の毒。 (債務なき責任)
一方、相続人は限定承認しましたので、残った債務は支払う必要ありません。
つまり、債務は相続するが責任は負わないとされています。
これを責任なき債務と言います。 (責任なき債務)
話をもとに戻して、
これが自分の借金ではなく、保証したためマイホームを売却しなければならなくなって、
且つ債務者からはその肩代わりした借金の返済も受けられない場合、譲渡所得の課税はされません。
それは、
保証債務を履行するために資産を譲渡し、
その売却代金の全部又は一部が保証債務の履行に充てられ、
その履行に伴って生じた求償権の全部又は一部が行使できなくなったときは、
その行使できなくなった金額について譲渡所得の金額の計算上なかったものとみなす
事になっていますから。
その例として
会社が潰れたので保証人が代わって会社の債務を返済することになった。
保証人は、自分所有の不動産はすぐに売却できないため、
まず銀行から借入れをして会社の債務を整理し、あとで、土地を売却して銀行に借金を返済した場合。
これは、保証債務の履行とはいえず、自分の借入金の返済です。
しかし、その実体は会社の債務を返済したことに変わりませんので、
このような形態の資産の譲渡の場合、特例の適用をうけることができます。
よかった、よかった、これで更に税金まで請求されていたら自己破産しなくちゃならなくなります。
でも、考えてみれば、少しも良いことなんかありませんね。
人の借金を肩代わりしたのだから。
保証人になるときは、よく考えて考えて保証して下さい。
では、こんな場合はどうでしょう。
息子が経営するA会社は、以前から経営がうまく行かず、資力喪失状態です。
借入金もあり、返済するためA会社は銀行から一時借入れすることになり、
父である私の土地を担保に差し入れました。
当然ながら、経営は好転することもなく、まもなく会社は倒産しました。
私は、保証債務を履行するため土地を売却しました。
特例の適用を受けることができるでしょうか。
残念ながら、この場合、特例の適用を受けることはできません。
債務保証という形式をとっていても、当時すでに実質的に資力喪失状態であり、
債務保証の履行は不能であったため、これは、債務の引受け、法人に対する贈与と認められますので、
所得税法64条2項の適用はありません。
従って譲渡所得税の対象となります。
少し話は、また逸れるようですが、
相続人は保証債務の地位は相続するのかということも大切です。
相続人の親が人の保証をしていた場合、
債務者が返済できなくなったとき、相続人がその債務を保証しなければならないか。
これは、重要な問題です。相続税法とも絡んできます。
継続性の保証債務は相続されません。
根保証契約など。商工ローンで問題となった契約。
普通の保証債務や連帯保証債務は相続されます。
一回だけの保証契約。継続性がない。
身元保証債務は相続性なしとされています。
銀行に雇用されるときなど、入行時身元保証をしたようです。
現在もあるのでしょうか。
信用保証債務は相続性なし。
現在の判例等ではこのように分類されているようです。
保証債務は、偶発的債務と考えられています。
相続人に相続された場合でも、将来履行義務が発生するかどうか不確実であり、
仮に保証を履行した場合でも求償権の行使によって補填される場合もあるため、
確実な債務とは言えない。
原則的に保証債務は、相続税法上債務控除はできない。
相続税法上保証債務は、このように考えられている。
また、相続税法上債務控除可能な債務とは、確実な債務をいい、
不確定な債務はダメとされています。
従って、もし、親の保証債務を相続し、将来履行義務の発生により土地を売却することとなり、
その履行に伴って生じた求償権の全部又は一部が行使できなくなったときは、
その行使できなくなった金額について所得税法上の税金はいらないと思います。
ただし、相続時点において、確実な債務となっていない限り債務控除はできません。
また、特例が受けられない場合として
譲渡した資産が棚卸資産又は棚卸資産に準ずる資産である場合は、この特例は受けられません。
割引手形の裏書譲渡をしてその手形が不渡りとなり、買戻しのため土地を譲渡した場合、
これは、振出人の借入金の保証をしたものではない。
したがって、土地を譲渡しても保証債務を履行した場合の課税の特例は適用できない。
譲渡所得税が課かります。
以上この特例の適用を受けるためには、申告をしなければなりません。
くれぐれも忘れることのないように。
人の保証とは、債務者が、きちっと返済してくれれば問題ありませんが、
万が一のときには、踏んだり蹴ったりの最悪の状態になることもありますので、
慎重に考えて下さい。
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